年商2億円。主婦が自宅で始めた研究が大成功 / 株式会社ビッグバイオ

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

 ごく普通の主婦から47歳で会社を立ち上げ、年商2億円の企業に育て上げた女性がいる。微生物の働きを利用したカビ取り剤や消臭剤・水質浄化用ブロックなどの研究開発および製造販売を行う、株式会社ビッグバイオ・代表取締役社長の阪本惠子さんだ。

 25年程前、自営業の夫の手伝いをしながら子育てをしていた阪本さんは、子供が成長するにつれて、自然の中で伸び伸びと遊びながら感性豊かに育ってほしいと強く思うようになっていた。
「でも、当時から水の汚染や水不足が問題になっていて、安心して子供を遊ばせられる場所がなかったんです。これから育つ子供たちのためにも、昔のようにき れいな水のある環境にしたい、と思って、環境に良いものがないだろうか、と興味を持ったのが最初のきっかけだったんです」

 当初は商品を開発するつもりなどなく、個人的な興味から環境セミナーに出ていた阪本さん。そこで微生物の働きについて知る。
「家の掃除で化学薬品のカビ取り剤を使って息苦しくなった経験もあって、化学薬品の使用に抵抗があったんです。セミナーでは、微生物がカビや悪臭を除去す る働きについての説明をしていました。微生物とうまく共存すれば環境や体に悪い化学薬品に頼らなくても済むということを知ったんです」
 
  また、阪本さんはこのセミナーで、現在、同社の専務として活躍している岩下智明さんと知り合った。阪本さんと岩下さんは、微生物を利用した商品を作るには どうしたらいいか、と具体的な考えまで話しあうようになり、本気で商品開発を行うことを決意。そして1988年頃から、2人は積極的に環境セミナーに出席 したり、独学で微生物について勉強し、研究を始めた。

 

自営業を営みながら自宅で研究開発

株式会社ビッグバイオ

「まったくの素人で、お金もない私たちの研究場所は自宅。いろいろな微生物を培養して、カビ取りや消臭、水質改善などそれぞれの研究をしました。風 呂場や洗面所など実際のカビ除去に使ってみたり、近所の友人たちに使ってみてもらったり。タバコの消臭力を確かめるためには、ヘビースモーカーが多いト ラックの運転手さんのいる運送会社に研究のお願いをしたりもしましたね」

 1993年、離婚を機に阪本さんは自身でクリーニングの取次店経営を始める。
「自営業ならある程度自分で時間の調整もきくし、自分がやった分だけの収入が入るから、開発のための時間とお金ができると考えたんです」
  お店の横に小さなプレハブ小屋をつくり、研究を続けた。そして、まずは家庭用のカビ取り剤を作り、1998年に商品化することに成功。
「最初は、地元の生協やコンビニエンスストアで少しずつ売ってもらったんです。1個作って売れたら次は2個作って売って。2個が3個、3個が4個と増えて いったんです。少しずつでも確実に売れているので、ニーズはあると確信できました。そして、大きな取引きもできるようにと2000年に法人化したんです」
 
  法人化すると、すぐに大きな受注が入った。それまで少量の販売だったため、すべて商品は阪本さんと岩下さん2人の手づくり。パッケージもワープロで作って 印刷してもらったものを手作業で一つひとつ包んで卸していたという状態だったため、数千個の発注が入った際には、友人達にむりやり来てもらって手伝っても らったこともあるという。

 

商品化の難関は資金繰り

 研究にはいろんな失敗もあったが、阪本さんが一番苦労したのは資金繰りだったという。
「最初は法人化もしていないし、実績もないので、当時はお金を借りることなんてできなかった。だから、クリーニング店で稼いだお金をせっせと研究費につぎ 込んでいたんです。商品化するまで大体年間で300万円位かかっていたと思います。お金は研究にほとんど使ってしまうので、大変だったのがパッケージの印 刷所探し。ほとんどの会社に全額前金でないと取引はできないと断られてしまいました。でも一社だけ分割での支払いでいい、と言ってくれて。商品が売れて資 金ができたら、印刷代を払う、ということを繰り返していましたね」

 販売当初、阪本さんはカビ取り剤を500円で販売していたが、パッケージ代などを抜くとほとん

ど利益が出ない金額だった。
「容器を作るお金まではなく、簡素なパッケージしかできなかったので、500円以上では売れないと思ったんです」
  その後、県の起業家支援センターから1000万円の投資を受けられることになり、ようやく資金ができ容器を作ることができた。今度は880円と設定。 1000円以上は、主婦だったら躊躇してしまうだろうという自身の経験からの値付けだった。だが、同社がOEMとして受けた別会社の商品は1200円で売 り出され、そちらのほうがより多く売れていることに気づいたという。
「消費者は、値段の差=品質の差と考えて、少しぐらいなら高くてもいいものを買うことも多いものなんですね。いくらなら買うか、ということは意識していた んですが、隣に並ぶ商品との比較ということまで意識していなかったんです。今更、値上げはできないので、今でも値付けについては反省しているんです」

 現在、カビ除去、消臭、水質浄化など多種類の商品化に成功している同社は、OEMの受託も行っている。
「自社商品としてでも、OEM商品としてでも、環境によい商品が少しでも多く世の中に出てくれれば、私はそれでいいと思っています。ただ、確かに自社で販 売したほうが利益率も高いので、結果的に自社で販売したメリットがありましたね。これからも、環境にいい商品を生み出し、どんどん広めていきたいんです」

阪本惠子さんプロフィール

阪本惠子さん

1953 年熊本県生まれ。高校卒業後、NTTに就職。1977年結婚を機に退職し、1978年と1980年に男子を出産。家事育児をしながら自営業の夫の事務手伝 いをする。1980年離婚を機に、クリーニングの取次店の経営を行いながら、微生物商品の開発研究を始め、2000年有限会社ビッグバイオ設立。2002 年、改組して株式会社に。

会社概要

株式会社ビッグバイオ
設立/2000年9月
売上高/2億2000万円(2006年3月期)

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