『電車&地下鉄のりかえ便利MAP』を産んだアイデアママ / 株式会社ナビット

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

「あ~あ、前から3両目に乗っていれば楽だったのに」

003都会で頻繁に地下鉄を使う人なら誰でも悩むのが「どの車両に乗れば、一番歩かずに乗り継げるだろうか?」ということ。何かと荷物が多くなる子連れの移動なら、なおさらのこと。しかもそれが夏の出来事なら……。

福井さんも、そんな苦い経験をした一人。95年の夏、長男を連れて地下鉄を利用したのだが、乗り換えようにもベビーカーを一人でかついで階段を上ることはできないし、エスカレーターは見つからないし……。

汗びっしょりで乗り換えを終え、「あ~あ、前から3両目に乗っていれば楽だったのに」と思った次の瞬間、乗り換えに至近の車両を調べられる『電車&地下鉄のりかえ便利MAP』のアイデアがひらめいたのだ。

それからは、週末ごとに夫に子供を預け、都内の地下鉄駅を自力で調査。200以上の駅にあるエスカレーターやエレベーター、トイレ、公衆電話などの位置、別路線への乗り換えに至便な車両をメモ。莫大な記録をまとめて、企画書を作成した。

50社以上をまわって実現へ。ママの粘り勝ち!

渾身の企画書を手に、50社以上の出版社にアプローチするも、結果は不採用の連続。企画書をけなされ、泣きながら帰ったこともあったが、ここでめげないのがママの強さ。企画書の改良を続け、ついに就職情報誌系出版社での採用が決まった。1996年のことである。

1997年には、自己資金300万円で(有)アイデアママを設立。その後、福井さんが考案した『電車&地下鉄のりかえ便利 MAP』は、都営地下鉄、営団地下鉄、JR東日本などへの導入も決まっていく。

「でも私、スッポンの福井って有名なんです(笑)。営団地下鉄さんに2年、JRさんには3年通って、ようやく導入にこぎつけましたから。まずは要となる電鉄をおさえ、次々キーとなる会社と契約を結んでいくのが、競争優位性を保つ秘訣です」

有限会社から株式会社へ。情報は全国をカバー

2000年には、資本金1000万円で株式会社に改組。2001年1月には社名を(株)ナビットに変更した。情報は鉄道研究会系の学生を動員して全国的にカバー。その精度や情報量、全国規模のネットワーク力には自信がある。

「だ けど、がむしゃらに自分が、自分がって前に出るつもりはないですね。大地に足をつけて、じっくりと夢に向かって進んでいきたい。アイデアって子供と同じ。 産めばかわいいもんです。だからこそ、ちゃんと育てて、世に送り出してあげたい。そのための粘りが、今につながっているんですね」

現在、ナビットは交通コンテンツ関連事業、マンナビゲーション関連事業、電鉄関連事業、バリアフリー関連事業の 4事業部を確立。『電車&地下鉄のりかえ便利MAP』をはじめ、交通専門のデジタルコンテンツを提供するベンチャー企業として、急成長を続ける。

長男をベビーカーに乗せて地下鉄の構内をさまよっていたママは、いつしか押しも押されもせぬ起業家へと転身を果たした。

【福井 泰代さん プロフィール】

神奈川県生まれ。成城大学を卒業後、キヤノン販売に入社。パソコンインストラクター兼販売員として働く。
出産を機に退社し、在宅の編集プロダク ションライターとなる。
95年、おしゃぶりにゴムを通して耳にかけ、落とさないよう工夫した「モーモーおしゃぶり」で特許を取得。
96年、『電車&地下鉄 のりかえ便利MAP』のアイデアを考案。
97年、(有)アイデアママを設立、2000年2月、株式会社に改組。
2001年1月(株)ナビットに社名を変 更。

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