第170回 株式会社Looop 中村創一郎 4

東日本大震災を機に中国から日本へ帰還。
再生可能エネルギー事業で日本を元気に!

<ビジネス修業時代>
いくつかのビジネスを経験しながら、
ライバルに勝つための要諦を学ぶ

 北京に拠点を置く、コマースクリエイトというコンサルティング会社に入社し、中国でビジネスを展開している日系企業向けのサポートサービスに従事することになりました。ここには3年ほどお世話になって、退職。経営に対して、ネットサポートに力を入れるべき、サービスにもっと付加価値を、など、いろんな提案をしたのですが受け入れてもらえず……。22歳の若造だったので当然かもしれませんが、ジレンマが膨らんでいったのです。自分は人に使われる性分ではないこともよくわかりました。その後、帰国して、京都で暮らし始めます。いろんなビジネスアイデアを温めていましたが、ひとまずパソコンのネット販売を始めることに。中国と台湾から部品を調達し、自宅で自らオーダーどおりに組み立てて発送。2000年頃のパソコンブームにうまく乗って販売は順調に推移します。

 ただ、販売数が増えると、購入者からの相談件数も増えていく。そのほとんどが、ハードではなくて、OSに関するものなんですよ。スティーブ・ジョブスが「ソフトとハードは一体であるべき」と言ったこと、本当に正しい。将来的なパソコン販売事業の行く末と、顧客とのやり取りの煩雑さをいろいろ考えた結果、このビジネスからは1年で撤退。ちょうどその頃、妻との離婚話が持ち上がるのです。じゃあ、と、妻に提案しました。「最後に家族で思い出づくりをしよう。商売で貯めた貯蓄が数百万円ある。キャンピングカーを買って、日本一周の旅に出かけよう」。で、実際にその旅に出たわけですよ。そして、旅の最中に新たな子宝を授かった。結果、離婚話はきれいさっぱり消えました(笑)。出発から1年ほどで、資金が底を尽き、思い出づくりの旅も終了です。

 その後、レアメタル商社である株式会社UMCの手伝いをすることに。父の会社AMJが事業規模が拡大したことで、UMCが小ロットの商売を引き受けるという関係の会社です。そして僕は上海に渡り、中国を専門とするレアメタルの調達業務に従事することになりました。レアメタルの発掘現場に通い、情報を収集し、いろんなカンファレンスで日本のレアメタル市場の状況を中国語で報告するなど、忙しく働いていました。でも、ある時、気づいたのです。レアメタルビジネスの一番のポイントは、モノを押さえること。つまり、いい価格でモノを押さえることができれば、買い手はいくらでもいるということに。

 そのうちに、父の会社であるAMJと、UMCが競合するケースも出てきました。それまではAMJの言うことを聞きながら、ビジネスを進めてきました。でもここからは、自分たちの力で成長させていこうとなりました。その後、UMCは4年間ずっと増収増益です。もめましたけどね、AMJと。でも、人からどう思われようが、顧客が選ばざるを得ない“機能”を持った者が、ビジネスの世界では勝者になるのです。僕の場合のそれは、中国に住んでいて、モノを押さえられたということ。「余人をもって代え難し」その存在になることが一番大事。嫌な思いもしましたが、UMCの仕事をとおし、ビジネスの要諦を学ばせてもらいました。今、僕が舵を取っている弊社Looopも、そんな存在になることを目指しています。

<大挑戦者祭への参加が転機に>
成功を続けていたレアメタル事業を離れ、
再生可能エネルギー事業をスタート!

 私は、ドリームゲートの「大挑戦者祭2010―グランプリファイナル」に選ばれ、ANAインターコンチネンタルホテルの壇上で、1000人を超える観客を前に、UMCのビジネスをプレゼンテーションした経験があります。審査員は著名な経営者7名。結果、審査員からいただいた評価は、資金提供検討1名、業務提携 2名、販売協力1名という素晴らしいものでした。グランプリファイナルに選ばれてから、ドリームゲートのアドバイザー・入野さんに、伝わるビジネスプランのつくり方、刺さるプレゼンの方法など、本当に懇切丁寧に指導してもらったのです。1000人を前にプレゼンしたことで度胸もつきましたし、ロジカルな営業トークも身についた。ちなみに、データ配信事業を始めたのは2010年に入ってから。そこから一気にUMCの売り上げが増加しています。入野さんの指導のおかげで、商品がどんどん売れるようになった。その機会をつくってくれたドリームゲートと、アドバイザーの入野さんには、本当に感謝しています。

 そんなわけで、UMCのレアメタルビジネスはものすごく儲かるようになっていました。僕自身の収入も増え、ちょっと天狗になっていたと思います。その一方で、本当にこのままでいいのかと悩んでもいたのです。本当は、自分で一から仲間をつくって、みんなを巻き込みながら、一緒に大きな成功を掴みたいと。
「人類の未来は全方向に無限」学生のときに読んだ本の題名です。(フリ-マン・ダイソン著 1990年)
技術革新が人類の未来に様々な可能性を与えることを示唆する内容でした。主な技術のポイントは、遺伝子、人工知能、太陽光。中でも特に興味を持ったのが、蝶の形をした宇宙船です。羽の部分が太陽光パネルとなり、太陽系圏内であれば、どこでも太陽光エネルギーのみで行くことが可能な宇宙船です。未来の宇宙船は核融合によるものばかりを考えていたので、発想の転換に驚かされたのを覚えています。

 Looop創業のきっかけは、東日本大震災での太陽光パネル設置ボランティアです。当時、パネルの原料になるシリコンを納品している取引先のご好意でソ-ラ-パネルをいただくことになり、電力供給が途絶えた被災地に入り、独立型の太陽光発電システムを設置して回りました。本当にたくさんの被災者の方々から感謝されました。その活動のなかで、ふと気づいたんですよ。地べたにパネルを置けば発電できて、その場ですぐに電力を使うことができる。電力が届かない場所は地球上にいくらでもあるわけで、ニーズは無限大である。例えばそれは、山奥でも、例えば宇宙でも――。

 この時、点と点が繋がった瞬間でした。雷に打たれたような感覚です。 中国で培った素材(レアメタル)に関するノウハウ、太陽光設置のボランティア、そして学生時代に憧れた宇宙船、この3つの点がつながったのです。起業しなければいけない、大げさではなく天命だと思いました。すぐに3人の仲間と一緒にLooopを設立。再生可能エネルギー事業をスタートさせたのです。

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